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水の交換には欠かせない! カルキ抜きの基本

2018/11/27

一年の中で、8月など夏の暑い日は、アクアリウムの水温・水質管理に気を使う時期です。

水温が上がれば、水中に溶ける酸素の濃度が下がって来ます。
すると当然そこに住む魚が酸欠になる要因となります。
また硝酸塩は逆に溶けやすくなることから、水質を悪くする要因になります。

日頃、水中に空気を供給していたり水温の管理をしている水槽は心配はありません。

しかし、そのような水槽でない場合、水質の管理に欠かせないのが、換水です。
水槽内の一部の水を抜き取り、水道などからの新鮮な水を補充することで行います。

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カルキはなぜ抜く必要はあるの?

一般的に水槽に使用されている水は、入手性や安全性を考えると、水道水になります。

この水道水は、浄水場で塩素を添加されています。

上水道を通り、一般家庭などの蛇口から水として出てくるのですが、
この水は、塩素が含まれた水で、法規で定められている「蛇口での塩素残留濃度を0.1mg/L維持すること」を維持しています。

この0.1mg/lは、法令で決められているもので守るべき濃度である為、実際には何倍か多く検出されます。

東京都の水質検査結果では、毎日0.4~0.7程度の塩素が蛇口から検出されています。

東京都の残留塩素(2018年11月25日の値)

これら塩素は、消毒目的で色々なところで使用されています。例えば水道以外で身近なものはプールでしょう。
学校のプールにも塩素が入っています。文科省により、遊泳用のプールに対する残留塩素濃度は0.4~1.0mg/lとするよう指示されている為です。

医薬品としても活用されています。
目や鼻などを消毒する際に用いられている塩素水は、120~300ppm程度なものが使用されています。
また、傷を洗うために4800ppmの塩素水が使われてるとのことです。

 

この塩素どれほど含まれていると水生生物に影響を及ぼすのか、調査した論文(1959年、北海道大学 島貫光治郎)があります。
ネオンテトラで行われた実験ではありませんが、参考になると思います。

その論文では、「オタマジャクシ」、「金魚」、「小鯉」、「水草」を実験に使用しています。
実験方法は、それぞれ生体を水槽に入れて、塩素の濃度を薬品により変えて、中にいる生体がどのような反応を示すのかを観察するものです。(論文では、濃度をppmで示していますが、ppm ≒ mg/lですので読み替えてください。)

この論文では塩素濃度に比例して、水槽内の生体の死亡率が上昇することが示されています。

投入塩素量0.50ppmの水槽にオタマジャクシを入れた場合60分経っても影響は確認出来ませんでしたが、
水槽の投入塩素量を0.70ppmに引き上げると水槽内のオタマジャクシは、死んでしまいました。

金魚についても同様のやり方で、確認しています。投入塩素量が、0.30ppm以下の場合、180minたっても影響は確認出来ませんでした。
しかし、金魚2匹入れた水槽の投入塩素量を1.00ppmに引き上げると、2匹とも死んでしまいました。

小鯉についても同様のやり方で、確認しています。投入塩素量が、0.10ppmの場合、時間がたっても影響は確認出来ませんでした。
しかし、小鯉4匹入れた水槽の投入塩素量を0.2ppmに引き上げると、4匹とも死んでしまいました。
(なお、生体の成長の度合いで、塩素に曝された場合の致死率は変化することも実験でされています。)

また、この論文は、水草についても実験しています。
こちらは、塩素濃度の桁が違います。実験にはアオミドロが用いられています。

水槽内の塩素実測量が100ppmの時、アオミドロは、長時間曝されていても影響は確認できなかったようです。
ところが、さらに倍の200ppmに塩素濃度を高めた時、3時間たった頃から黄緑色に脱色がはじまったようです。さらに塩素濃度をを700ppmに上げると1440分後には、白色化していたそうです。

流石にアクアリウムにおいて、200ppmという数値は、考えるべき濃度ではありません。
意図的に塩素を添加しない限りなり得ないほどの高濃度です。
この実験により水草は、アクアリウムにおける塩素の影響をほぼ受けないくらい塩素に対して耐性があることが示されたと考えていいでしょう。

このように、塩素は、生体に対して悪影響を及ぼすことは間違いなく、
水槽に注水される水は、塩素が除去されていかは重要視すべきです。

これから、この塩素を取り除く方法を見てみましょう。

塩素の除去方法

ハイポを使用する。

まず、薬品を使用する方法です。
おなじみ「ハイポ」ことチオ硫酸ナトリウムを用います。

チオ硫酸ナトリウムって?

ハイポ商品の一例

ハイポの結晶

これは、ホームセンターや、薬局などで一般的に売られている薬品です。
外見は、小さな氷砂糖のような白色結晶で、匂いは無臭です。

 

水によく溶けるため、アクアリウムの中では、扱いやすい薬剤です。

ハイポという名称は、次亜硫酸ナトリウム( sodium hyposufite )でhypoをとりハイポと呼ばれるようになりました。なお、次亜硫酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムは全くの別物で、誤った名称の略称が世の中には広まっています。

ちなみにチオ硫酸ナトリウムは、sodium thiosulfateと書きます。

塩素がチオ硫酸ナトリウムにより解毒される機序は以下の通りです。
Na2S2O3+4Cl2+5H2O → Na2SO4+S↓+2HCl
若干の塩酸を生成しますが、残留塩素濃度が絶対量として少なくため、pHを酸性に傾けるほどの量はありません。
よって、生体への影響はありません。

 

使い方は?

ハイポの使いかたは、至って簡単です。換水の為に用意した水に、ハイポを入れるだけです。
ハイポを入れたと、かき混ぜ結晶を溶かし切ったら塩素の除去は完了しています。

何リットルに対して、何粒程度入れるのか?

先程触れましたが、塩素量は極めて少ないことから、一粒でかなりの量に用いることが出来ます。
粒の大きさにもよりますが、1粒でおよそ10Lは塩素除去に対応できます。詳細は購入されたハイポの取扱説明を確認してください。

入れたらすぐ入れていいのか

塩素は、十分除去されています。しかしいざ換水を行なう場合、気を使うところは、残留塩素だけではありません。

それは、水の温度です。
水槽の水温を急激に変化させないためにも、ヒータを入れて温めておくか、チューブで少しずつ水槽に注水されるようにしましょう。

また、pHもアルカリ性を好む魚や酸性を好む魚なのか、

塩素中和は、チオ硫酸ナトリウムを使用する以外に方法があるのか。

私は、身近にある水道水を安価なチオ硫酸ナトリウムにより残留塩素を除去する方法がコスト、入手性など総合的に考えて一番良いと思いますが、水槽や生体の状況によって、適宜選択していく必要があるかと思います。

カルキ抜き製剤

熱帯魚の飼育用品を扱うメーカーから、塩素除去に加えてより水質を向上されるため添加剤が含まれているものがあります。

例えば、水に溶ける重金属を除去したり、ビタミンB1、粘膜保護剤が添加されている様なものがあります。これらを使うことで、より良い水質を得ることが出来、換水時のトラブルを防ぐことが出来ます。

特に弱っている個体がいる水槽では、極力換水に対するストレスを低減させる為使用されるケースもよくあります。

沸騰水を使用する。

塩素除去に薬品を用いないで行なう方法の一つです。

これは、沸騰させることで水中に溶ける塩素を待機中に追い出すことができます。ただし、当然冷ます必要があるため、ハイポなどの薬剤が無い場合の非常手段というところでしょうか。

放置し時間をかけて抜く。

2、3日太陽の陽が当たるところにペットボトルなどに入れた水を出しておき、太陽熱によって水中の塩素を除去する方法です。

実は、塩素濃度はしっかり管理しないとどんどんと下がっていきます。これは、炭酸飲料と同じで時間が立つと二酸化炭素が抜ける様に、塩素も時間が立つとともにどんどんと空気中に発散されてしまうためです。また、沸騰水を作る原理と同様に太陽の熱によって、塩素の発散を促進させます。

こちらのほうも薬品を使わずに塩素除去が出来るのはメリットではありますが、いまいち塩素が抜けているかわからないという点と、時間が非常にかかるという点がデメリットです。

また水を置く場所にも注意が必要です。透明なペットボトルに水を入れてカルキ抜きを行なうのであれば、燃えやすいものを近くにおいてはいけません。太陽光をレンズの様に収斂させてしまい、燃えやすいものへの火種になってしまうおそれがあります。

自然除去の場合、塩素の除去の度合いを測るため、塩素試薬を使用して確認することが望ましいです。

 

浄水器を使用する。

家庭用にカルキ抜きの機能がある浄水器が売られていますので、こちらを使用する方法もあります。
やはりメリットは、薬品を混ぜたりする必要が無く手軽にカルキ抜きの水を得られることでしょう。
デメリットとしては、フィルタ内に潜むバクテリアの繁殖です。
また、フィルタ機能の経年劣化がありますので、定期的に残留塩素が除去できていることを確認することが望ましいです。

 

ミネラルナチュラルウォータを使用する。

最後に、こちらは、家にあるものを工夫することで、水槽の水として使える様にしようとするアプローチだったのに対して、こちらは真逆と言っていい方法です。

スーパーやコンビニに売っているミネラルナチュラルウォータを使用する方法です。
こちらは、水温さえ適合できれば、すぐに使用出来ます。しかし注意する点がないわけではありません。
それは、硬度です。実は、水には豊富にミネラルを含む硬水とミネラル分が少ない軟水にわけられます。
魚によって、どちらを好むか違いがありますが、一般的には、軟水を好む傾向にあります。

よって、購入する前には、ラベルに記載されている硬度を確認すると良いでしょう。

 

まとめ

水道水の塩素除去には、ハイポが第一選択。水槽の生体の調子によって、カルキ抜き製剤を選択。
万一、換水用の薬品が手に入らない場合は、以下の方法を取ることができます。

・沸騰水を冷ましてから使用する。
・浄水器の水を使用する。
・ミネラルウォーターを使用する。

出典

チオ硫酸ナトリウム
https://ja.wikipedia.org/wiki/チオ硫酸ナトリウム

文科省 遊泳用プールの衛生基準について
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19920428001/t19920428001.html

東京都 残留塩素濃度
https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/suigen/kekka/today.html#suishitu

残留塩素の作用について - 残留塩素の水中生物に及ぼす影響(第三報)(1959年、北海道大学 島貫光治郎)
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/40657/4/21_1-32.pdf

 

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